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京都地方裁判所 昭和60年(わ)980号 判決

本籍

京都市右京区西京極中町四〇番地

住居

同市下京区松原通油小路東入天神前町三二七 山本二三子方

無職

宇津竹次郎

大正一四年七月一八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官山田一清出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月及び罰金一〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二五〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、全日本同和会京都府・市連合会事務局次長渡守秀治らが架空の債務を計上した納税申告をなすなどの方法により脱税行為を行なっていることを認識していたものであるが、井上博文がその所有する京都市右京区西京極東側町八・九番合地ほか三筆の宅地を昭和五八年八月三一日二億〇〇七九万二四〇〇円で売却譲渡したことに関して右譲渡にかかる所得税を免れようと企て、同人、松本芳憲、渡守秀治、更には右連合会が組織活動の一環として前記方法で脱税を行なうことを互いに了解していた右連合会会長鈴木元動丸、同会事務局長長谷部純夫らとも渡守を介して意思を相通じて共謀の上、井上の実際の昭和五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一億八四二六万四〇三〇円、総合課税の総所得(不動産所得、給与所得)金額は六一六万九二〇〇円、山林所得金額は二八一万七五〇〇円で、これに対する所得税額は五七三五万五一〇〇円であるにもかかわらず、株式会社ワールドが有限会社同和産業(代表取締役鈴木元動丸)から二億円の貸入れをし、その債務について井上が連帯保証人となり、右株式会社ワールドが倒産したことから右連帯保証人債務を履行するために右不動産を譲渡し、その譲渡収入で昭和五八年一一月三〇日一億七〇〇〇万円履行したが、右株式会社ワールドに対する求償不能により、同額の損害を被った旨仮装するなどした上、渡守及び長谷部が昭和五九年二月一四日同区西院上花田町一〇番地の一所在の所轄右京税務署に赴き、同署長に対し、井上の昭和五八年分分離課税の長期譲渡所得金額は一四五六万四〇三〇円、総合課税の総所得金額は六一六万九二〇〇円、山林所得金額は二八一万七五〇〇円で、これに対する所得税額は三七三万四七〇〇円(但し所得税額三七三万四七四〇円と誤って記載)である旨の内容虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右の正規の所得税額五七三五万五一〇〇円との差額五三六二万〇四〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する各供述調書(検第二二ないし二四号)

一  井上博文の検察官(検第四ないし一三号)及び大蔵事務官(検第二五号ないし三〇号)に対する各供述調書謄本

一  松本芳憲(検第一六ないし一八号)、渡守秀治(検第一九号)、長谷部純夫(検第三一号)、鈴木元動丸(検第三二号)及び吉村松雄(検第三三号)の検察官に対する各供述調書謄本

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書謄本(検第一号)、証明書謄本(検第二号)及び報告書謄本(検第三号)

(法令の適用)

罰条

刑法六五条一項、六〇条、所得税法二三八条一項

刑種の選択

懲役刑及び罰金刑

宣告刑

懲役八月及び罰金一〇〇万円

労役場留置

刑法一八条

懲役刑の執行猶予

同法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 氷室眞)

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